ギリシャ美術
時代:BC6世紀頃〜0年
特徴:理想の姿・筋肉・大胆
画題:ギリシャ神話の神々
目的:「理想の美」の追求
場所:ギリシャ
人物:不明
背景:哲学・良質な大理石
作品:パルテノン神殿・ミロのヴィーナスなど
「理想の美」の追求
ギリシャ美術が栄えた時代では、哲学が盛んで、「精神と肉体との調和が取れた人間」になることが理想とされていました。そのため、人々は「理想の美」を追求すべく、理想化された人体表現をしました。
ローマ美術
時代:紀元前1世紀頃〜3世紀頃
特徴:巨大な建築・人間味が出てくる
画題:皇帝の肖像など
用途:権力誇示
場所:ローマ
背景:ローマ帝国の拡大により発展
作品:ユリウス・カエサルの肖像 など
権力誇示のために発展
ローマ美術はローマ帝国の拡大により発展した美術です。ローマ帝国の権威を誇示するために、コロッセウムや凱旋門などの巨大な建造物が多く作られました。
彫刻作品では、ギリシャ美術よりもモデルとなる人物(権力者)の人柄なども含めて表現しようと試みたため、少し人間らしい表現となっていきました。
初期キリスト教美術
時代:2世紀頃〜6世紀頃
特徴:モザイク画・素朴な表現
画題:宗教画
目的:布教
用途:布教
場所:ローマ
背景:キリスト教とともに発展
キリスト教とともに発展
初期キリスト教美術は、キリスト教の布教と共に発展しました。
キリスト教は60年頃からローマに伝わり、313年にはローマ帝国に公認されるようになった新興宗教。信者たちは布教のため、文字の読めない人にもキリスト教を伝えられるように宗教画を描きました。
キリスト教がローマで公認されるまでは弾圧されていたことや、キリスト教が偶像崇拝(絵などに描いて拝めること)を禁止していたことから、キリストは当初羊や魚などとして描かれ信仰されました。
簡素な表現・モザイク画
モザイク画は、石や貝のかけらを寄せ合わせて作る絵画技法のこと。
初期キリスト教美術ではこの技法を用いて墓地や教会の壁などにキリスト教の世界観を表現しました。
キリスト教が普及してからは、弾圧が収まり、偶像崇拝も緩和されたため、イエス本人が描くようになりましたが、「キリストをリアルに描くのは畏れ多い」ということで、キリストの姿は簡素にデフォルメして描かれました。
モザイク画は貝や石を張ることから細かな表現に向いていないため、「リアルに描きすぎない」という初期キリスト教美術の考え方に合った表現方法でした。
ビザンティン美術
時代:5世紀〜15世紀頃
特徴:正面から描いた肖像画・装飾的
画題:宗教画(キリスト教)特にイコン(聖人像)
用途:布教・政治利用
場所:東ローマ帝国
背景:モザイク画・フレスコ画が発達
装飾的な宗教画・決まった構図ができる
ビザンティン美術では、ギリシャ・ローマ美術やキリスト教美術を継承しつつ、アジア(ペルシャ)から入ってきたエジプトやメソポタミアの装飾的な美術要素が加わった絵画様式が誕生しました。
この時期、頻繁に描かれたのはイコンという、聖人の肖像画でした。
特にキリストを真正面から描いたイコン画は、神聖なものとされ、権威を持つようになります。
ゴシック美術
時代:12世紀後半〜
特徴:ステンドグラス
場所:北フランスなど
有名:シャルトル大聖堂のステンドグラスなど
背景:建築技術が進歩
建築技術が進歩・ステンドグラスが発展
ゴシック美術では建築技術が進歩したことにより、アーチや細い柱での建築、大きな窓を作れるようになったため、絵画は壁画でなくステンドグラスが多く用いられるようになりました。
ルネサンス美術
時代:14世紀頃〜
特徴:正確で均整の取れた人体、豊かな表情、奥行ある空間表現
画題:宗教・人物・風景・風俗
目的:ギリシャやローマ文化の復活
用途:布教・権力誇示など
場所:イタリア(フィレンツェ)→ローマ
人物:レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロ
背景:十字軍の失敗、絵の具の発展
作品:最後の審判 モナリザ など
キリスト教の布教前の文化の再生
ルネサンスの語源はイタリア語の「再生(rinascita)」
十字軍の遠征失敗や戦乱・ペストの流行により、人々は従来のキリスト教的な価値観から離れ、キリスト教が入ってくる前のギリシャ・ローマ文化を「再生」しようとしてルネサンス美術は始まりました。
正確で自然な表現
ルネサンス美術では、これまでのビザンティン美術のような、決まった構図や描き方ではなく、人間や自然を現実的・科学的に捉えなおそうとしました。
そのため、正確で均整の取れた人体表現、豊かな表情、奥行ある空間表現が特徴です。
また、絵の具を作る技術が発展したことで、よりに緻密な描写が可能になったことも、ルネサンス文化の発展に大きく影響しました。
また、この頃から風景画・風俗画が描かれ始めますが、風俗画といっても宮廷の様子を描く程度でした。
補足:ルネサンス内での分類
・初期ルネサンス
自然な表情・奥行きのある空間表現 ジョットやボッティチェリなど
・北方ルネサンス
人物画、風景画、風俗画を確立 ヤンファンエイクなど
・盛期ルネサンス
ギリシャ・ローマと同等の美術の完成 レオナルドやミケランジェロ、ラファエロなど
バロック美術
時代:16世紀末〜18世紀前半
特徴:暗い画面・劇的な光の演出・誇張
画題:宗教・人物・風景・風俗(宮廷の従者も描く)
用途:宗教の宣伝・権力誇示(貴族〜富裕層)
場所:イタリア・スペイン・オランダ
人物:カラバッジオ・ルーベンス(イタリア)、
ベラスケス(スペイン)、
レンブラント・フェルメール(オランダ)
背景:宗教改革・カメラオブスクラ・サロン設立
作品:夜警など
カトリック布教のため劇的に描かれる
バロック美術は、宗教改革によりプロテスタントが生まれたことで、危機を感じたカトリックが信者を呼び戻すために生まれました。
絵画は布教のために描かれたため、劇的な表現が好まれ、スポットライトをあてたような、ドラマチックな光の演出が行われるようになりました。
また、16世紀からはカメラ・オブスクラという、風景を投影する装置が普及したことでより写実的な絵画を可能としました。
また、絵画の民衆化がやや進み、富裕層が力をつけ絵画が買えるように、また画家たちは貴族だけでなくその従者まで描くようになりました。
補足:キリスト教の宗教画はカトリックだけ
キリストの姿を想像で描くことは、本来キリスト教で禁止されている「偶像崇拝」であると反対し、生まれたのがプロテスタント。
そのため、プロテスタントは宗教画をほとんど描いていません。
サロン設立
また、この時期に西洋美術史を語る上で欠かせない「サロン」が設立されました。
サロンとは、フランスの国が運営する展覧会のこと。1648年に設立されて以降、その時々の画家の技術を見定める場として絶対的な権力を持ち続けました。
ロココ
時代:18世紀
特徴:軽快・優美・装飾的
画題:宗教・人物・風景・風俗(男女の戯れ)
用途:権力誇示
場所:フランスの宮廷
人物:ヴァトー、フラゴナール
背景:貴族文化、サロンが始まった
作品:ぶらんこ など
優雅な貴族文化を理想的に描く
貴族が栄え、ピクニックやサロンなどといった貴族の文化が優雅になった時代。
この時代では、貴族の生活や男女の戯れを想像的に描きました。
ルネサンス以降重視されていた正確で自然な人体表現よりも、「豪華で楽しそう」という雰囲気を出すことが宮廷で好まれました。
新古典主義
時代:18世紀後半〜19世紀前半
特徴:安定した構図、正確な形、形式美
画題:宗教・人物(肖像)・風景・風俗
目的:ギリシャ・ローマ様式の模倣
用途:権力誇示など
場所:ヨーロッパ全土
人物:ダヴィット・アングル
背景:新たな古代遺跡の発見から古典への関心
ナポレオン政権
作品:グランド・オダリスク など
フランス革命で貴族文化が衰退。古典回帰へ
フランス革命によって絶対王政が崩壊したことをきっかけに、軽快で派手なロココの貴族文化が廃れ、その反動で再び古典を見直す動きが出てきました。
また、新たな古代遺跡の発見があったことも古典回帰の流れを一層推し進めました。
ロマン主義と新古典主義はほぼ同時期
ロマン主義は新古典主義とほぼ同時期に発展しました。
フランス革命以降、民主化が進むことで新古典主義やロマン主義主義をはじめとした多様な絵画の流れが生まれました。
ロマン主義
時代:18世紀末〜19世紀前半
特徴:個性、感情、主観的な作品(絶望・恋愛など)
画題:歴史・人物・風景・風俗
用途:権力誇示
場所:イギリス・フランス・ドイツ
人物:ドラクロワ・ゴヤ・ターナー
背景:産業革命・民主主義
作品:民衆を率いる自由の女神 など
個人の感情や思いを表した絵画
ロマン主義では、新古典主義に対し、個人の自由な感性や想像力を表した情熱的な絵画が好まれました。
ロマン主義の頃には、産業革命や民主主義などの影響で民衆の力が強くなり、権力者の権力誇示や宗教の布教のために存在していた絵画がだんだんと民主化されていきました。
そのため、画家は個性や感情など、自分の主観を表に出したような作品が多く描かれるようになりました。
写実主義
時代:19世紀中頃
特徴:写実的、自然光
画題:風景・人物(農民をメインで描くようになる)
目的:目に見えるものをありのままに描こうとした
場所:パリ郊外
人物:クールベ、ミレー、コローなど
作品:落穂拾い など
現実をありのままに描く
写実主義の画家は、古典主義やロマン主義などの理想的な世界ではなく、現実を見直そうとしました。
農民を主題として描く
写実主義の画家たちは、これまであまり描かれることのなかった農民を好んで描きました。
印象派
時代:19世紀
特徴:明快な色、荒いタッチ、屋外での制作
画題:風景・風俗(娼婦なども描くようになる)
目的:光がきらめくその一瞬を切り取ろうとした
場所:フランス
背景:チューブ絵具の開発、ジャポニズム(19世紀中頃)
技術:写真の発明(1827年)、蒸気機関車(1802年)
作品:印象ー日の出 など
うつりゆく景色を混色せず印象的に描く
混色せず、チューブから出したままの色で、その時その瞬間の印象を描く技法が特徴的な印象派。
印象派は「デッサンや遠近法など優れた技法で歴史画・宗教画を描くことがすばらしい」と考えられていた時代に、技法を無視した感覚的な技法で風景画や風俗画を描きました。
また、チューブ入り絵の具が開発されたことで、屋外での制作が容易になったことも印象派の制作スタイルを後押ししました。
フォービズム
時代:20世紀初頭
特徴:原色・激しい色彩
画題:風俗・風景
目的:色彩で感情を表そうとした
場所:フランス
人物:マティス、アンドレ・ドラン
作品:赤のハーモニー など
色彩で感情を表そうとした
フォービズムは「色の革命」ともいわれ、固有色(りんごは赤など、そのもの自体の固有の色)にとらわれず、原色を使った激しい色彩で感情を表現しました。
フォービズムの名前の由来はフランス語の「フォーヴ(野獣)」
批評家がフォービズムの作品に囲まれた作品のことを「野獣の中にあるドナテッロ(※ルネサンス期の彫刻家)のようだ」と批評したことからこの名で呼ばれるようになりました。
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キュビズム
時代:20世紀初頭
特徴:複数の視点や角度から描く
画題:人物・静物・風景
目的:3次元をいかにして2次元にするかという主題の追求
場所:フランス(パリ)
人物:ピカソ・ブラック
作品:アヴィニョンの娘たち 泣く女 など
3次元の現実を2次元にする
キュビズムの語源は「キューブ(立方体)」
キュビズムの創始者の一人であるジョルジュ・ブラックの描く風景画が「小さなキューブによる絵のようだ」と言われたことから、この名前が付きました。
彼らは3次元の現実世界を2次元で捉えるにあたり、これまで一つの視点から描いていた絵画に疑問を持ち、さまざまな視点から見たモチーフを一つの画面に収めました。
伝統的な遠近法や写実を一切無視したことから、「形の革命」ともいわれています。
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ダダイズム
時代:第一次世界大戦中(1914〜1918年)
特徴:反芸術
画題:既製品などから引用
目的:伝統芸術の否定・反戦
場所:ヨーロッパ→ニューヨーク
人物:デュシャン
背景:第一次世界大戦
作品:泉・キャンベル缶 など
これまでのアートの存在意義を問う
ダダイズムは、第一次世界大戦中、社会や文化に対する抵抗や絶望感などから、アートや創造をすることの意味・可能性を問いかけることから始まりました。
特にデュシャンは既製品(レディ・メイド)に架空の画家のサインをすることで、これまでのアートの存在意義や、作家自ら創造することの意味を問いかけたことで有名です。
また、この頃を起点として、アートの中心がヨーロッパからアメリカへと移ったことも重要なポイントです。
シュルレアリスム
時代:1919〜1924年
特徴:驚異、意外な並列、不条理性
画題:風景
目的:潜在的な意識や欲求を引き出そうとした
場所:フランス
人物:マグリッド、ダリ
背景:心理学者・フロイトの精神分析理論に影響
作品:記憶の固執 など
潜在的な意識や欲求を引き出そうとした
シュルレアリスムは、ダダイズムの流れの中で発生・発展していった芸術運動です。
特にフロイトの精神分析理論に影響を受け、夢の情景などを使って潜在意識を引き出そうとしました。
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