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概要
年 代 1907年~
地 域 パリ
創始者 パブロ・ピカソ ジョルジュ・ブラック
流 れ ポスト印象派 セザンヌをまねている
特 徴 様々な角度から見た対象を一つの画面に収める
題 材 肖像画・静物画・風景画など
その他 後の現代芸術に大きな影響を与えた
いろんな方向から見たモチーフを一枚の絵にする発想がすごい
キュビスムは、「1つの方向から見たモチーフを描く」という絵画の当たり前を覆し、モチーフのいろんな方向から見た形や面を組み合わせて絵を描きました。
それは、これまで当たり前とされてきた遠近法とは全く違う捉え方だったため、絵画の新たな可能性を見出し、後の絵画界に大きな影響を与えました。
キューブのような絵画
キュビスムの日本語訳は「立体派」。Cube(立方体)ism(主義・流儀)です。
名前の由来は、ジョルジュ・ブラックの風景画を、批評家や画家たちが「キューブのようだ」と言ったことから来ています。
実際にはキューブ(立方体)以外にも円錐や球などの単純な形に置き換えて、モチーフを表現しました。
単純な形に置き換えた
キューブという名前の通り、彼らはあらゆるモチーフを立方体や円錐、球といったような単純な形に置き換えました。
この背景には、キュビズムの画家達が影響を受けたセザンヌの絵画に原点があります。
「自然の中のすべての形態を円筒、球、円錐で処理する」
https://www.artpedia.asia/cubism/
このセザンヌの言葉を頼りに、従来の立体表現とは異なる、単純な形を組み合わせて描く表現方法を考えました。
モチーフの本質・目に映る以上のリアルさを探求
彼らはモチーフをいろんな視点から見て、単純な形に置き換えながら再構築することで、これまでとは違う「リアル」を探求しました。
これまでのリアリズム(写実主義)では、目に映るあるがままを描くことが重要とされてきましたが、19世紀のカメラの発明により「目に映るあるがまま」はカメラの方が早く正確に写せるようになりました。
そこでキュビズムの画家たちは、これまでの単視点の絵画では表現できなかった現実世界のモチーフの立体的な形や、生き生きとした姿(概念のリアリズム)を描こうとしたのです。
有名な画家・作品
キュビスムの出発点 ピカソ「アビニョンの娘たち」
キュビズムの出発点と言われている作品。
様々な視点から見て描くキュビズム的な描き方は右側の女性2人の表現に現れており、右下の女性は右目が正面から、左目は真横から見た顔を描いているのがわかります。
アヴィニョンとはスペインにある道の名前で、この娘たちは売春婦でした。
ピカソはエジプト彫刻やイベリア彫刻、アフリカ彫刻などから着想を得て人間の原始的なイメージを描こうとしました。
ピカソがマティスやブラックら友人にこの作品を見せると酷評を受けましたが、最終的には彼らに影響を与えることとなりました。
特にブラックは1度は批判したものの、この作品の価値に気がつき、ピカソがこの作品を描くにあたって影響を受けたセザンヌについて研究しました。
キュビズムの名前の由来 ブラック「レスタックの家」
https://www.amazon.co.jp/プリキャンバス-ブラック・「レスタックの家」-プリキャンバス複製画・-額付き(デッサン額-大衣サイズ)/dp/B00PHHICQA
【外部リンク】レスタックの家 ジョルジュ・ブラック 1908年 73×59.5cmベルン美術館(スイス)
ブラックが「アビニョンの娘たち」に影響を受け、ピカソが影響を受けたというセザンヌ的な絵画表現を追い求め、セザンヌゆかりのレスタック地方へ旅をした際に描いた作品。
家や木々は「面」で捉えられ、大胆に単純化されています。光の表現も光源を一つに絞って描くこれまでの絵画とは違い、さまざまな方向から発せられた光を描くことでモチーフそれぞれの立体感が失われているのに、なぜか全体的には奥行きがあるように見えます。
この作品がきっかけとなり「キュビズム」という名前が付けられるようになりました。
ブラック「ギターを持つ男」
ジョルジュ・ブラック ギターを持つ男 1910年 ニューヨーク近代美術館
アヴィニョンの娘たちを見たブラックが影響受けて描いた絵画です。
「レスタックの家」より後に描かれた本作では、よりモチーフを細かく分けて単純化しており、より幾何学的になっていきました。
また、色彩は全体の雰囲気を調和させるために落ち着いた茶色や灰色をベースにまとめられるようになりました。
ピカソの名言「こどものころに描いた絵」
ピカソは晩年、このような名言を残しています。
「ようやくこどものような絵が描けるようになった。ここまで来るのにずいぶん時間がかかったものだ。」
人間は、人の顔の特徴や印象を捉えるとき、様々な角度から見た顔が無意識に頭の中でつながり、イメージがつくりだされます。
では、こどもの絵はどうでしょうか。印象に残った場面が切り取られ、組み合わさって、一つの絵として生まれます。
こどもは無意識的に、キュビスム的な絵画を描いているということになります。
ピカソは、このようなことが言いたかったのではないでしょうか。
大人からすれば、キュビスムが生まれてまだ100年程度。美術史的に見れば割と新しい概念です。
こどもとは、時に我らにない新しい考え方をもたらすものだと改めて気付かされます。
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