掛軸とは?歴史や鑑賞方法などについて詳しく解説します。

やまと絵

掛軸とは

概 要 書や絵画を布や紙で表装したもの
    茶道とともに発展
支持体 布や紙
内 容 仏、山水、花鳥、人物など
観かた 対幅・表装に注目

飛鳥時代に中国から伝来

掛け軸はもともと、仏教を広めるための道具として飛鳥時代(592-710 年)に日本に入ってきました。

千利休により鎌倉時代に発展

当時中国では礼拝用として使用されていましたが、日本では鎌倉時代に千利休が掛軸を広めたこともあり、茶道や禅と深く融合し、床の間などに掛けて鑑賞する独自の文化が発達していきました。

鎌倉時代には仏画や道釈画(どうそんが・道教や仏教関係の人物画)、中国の山水画を描いた唐絵の掛け軸が流行しますが、江戸時代になると花鳥画や肉筆浮世絵など、やまと絵の流れを汲んだ作品が多く描かれるようになりました。

狩野元信 白衣観音図 ボストン美術館 (引用元)

掛軸の鑑賞方法

座って鑑賞する

掛軸は茶道とともに発展したこともあり、座って掛軸を見上げたときに美しく見えるよう、畳や床間の大きさなども考慮された上で掛軸の寸法が決まっています。

そのため、本来の鑑賞方法と同じように座った時の見え方で鑑賞するのがおすすめです。

対幅(ついふく)に注目

対幅とは、複数の掛軸を一セットの作品として描く形式のことです。

対幅は全体でだけでなく単幅だけでも鑑賞できるため、飾り方にも自由度が高いことが特徴です。

それぞれ単幅での構図はもちろん、対幅として飾った時の構図も考えて構成されているため、掛軸を鑑賞するときは「対となる作品があるかどうか」をチェックしておくと観かたが広がるでしょう。

また、対幅の作品はセットとなる主題がある程度決まっているため、セットとなる主題を調べた上で鑑賞すると面白い発見があるかもしれません。

二幅対

二つで1セットの掛軸。二つで1セットという形式上の性質のため、「鶴亀」や「龍虎」などよくセットで描かれる動物をそれぞれ描いた作品が多く存在します。

掛け軸の掛け方~丁寧に取り扱いましょう
掛け軸のことがわかる,掛け軸の歴史、形式から掛け方、飾り方まで,裂地と軸先などについての蘊蓄

【外部リンク】掛軸の掛け方 2幅対、三幅対のことが説明されているためリンクを貼っておきます。

三幅対

仏教の布教のため中国から伝来したことから、日本では三尊像に見立てた3つで1セットの三幅対という独特の形式が生まれました。

そのため、三尊像を左右中央それぞれに描いた作品はもちろん、本尊はそのままとして左右の脇侍の代わりに動物を描く(観音・猿・鶴)などとした作品や、中央に僧を配し、左右に龍虎などを描いて僧の権威を表現した作品などが多く見られます。

また、中央に配するモチーフを引き立たせるため、中央の作品だけサイズが大きいこともあります。

(引用元)

美術館でしか見られない?表装に注目

表装とは、絵や書に縁どりや裏打ちなどをして掛軸などに仕立てることをいいます。

掛け軸の表装は額と同じように「絵を飾るもの」ですが、なかには「絵の延長」として表装を仕立てている作品もあり、表装も含めて鑑賞するといっそう楽しめます。

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【外部リンク】歳の首の図 鈴木其一 細見美術館

掛け軸の中には「描表装(かきびょうそう)」という、絵の周りの表層部分も絵画として描くものがあります。これは、古来仏画で扱われていたものですが、鈴木基一などは描表装を用いた花鳥画などを描いています。

表装はネット検索では出てこないものも多く、実物を見ないとなかなかわからないものですから、そんなところも実物を見て楽しみたいポイントです。

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