絵巻物とは?技法・鑑賞方法について詳しく解説します

やまと絵

絵巻物とは

概 要 風景や物語などを書いた本の一種
支持体 紙や絹・麻
内 容 物語・風景・戦争・説話
特 徴 横長い・詞書があるものとないものがある
読み方 肩幅に広げて、右から左へ
技 法 吹抜屋台・異時同図法

絵巻物とは、紙や絹などを水平方向に、横長くつなげた、ページのない本です。

おもに物語を記すために発展した本の一種で、詞書(ことばがき)という、絵に添えられる説明文があるものとないものがあります。

絵巻物は日本古来のやまと絵に由来した作品が多く、奈良時代に生まれ、鎌倉・室町時代に発展しました。

絵巻物の読み方は?

肩幅程度に広げて鑑賞する

展示では一度に大勢のひとがすべての場面を鑑賞できるようにするため、絵巻物をすべて広げた状態で展示されていますが、本来絵巻物は肩幅程度に開いて鑑賞します。

そのため、ストーリーも肩幅の幅(60cm程度)で展開していきます。

当時は貴族の社交界のような場で、数人で読んで楽しんでいたようです。

絵巻物特有の技法とは?

絵巻物は、他にない横長の画面で、連続した絵の中で物語を描くものであるという特徴から、独自の技法が発展していきました。

今回はその技法のうち2つをご紹介したいと思います。

吹抜屋台

屋根や天井を描かない技法

源氏物語 藤原隆能(ふじわらのたかよし) 12世紀前半 徳川美術館 (引用元)

吹抜屋台(ふきぬきやたい)とは、室内の様子が分かるように、建物の屋根と天井を描かない技法のこと。

こちらの技法は絵巻物以外にも使用されますが、絵巻物によく見られる技法です。

この技法のおかげで、建物の中と外で起こっているストーリーが同時に描けるようになりました。

異時同図法

第62回『信貴山縁起』「尼君巻」の「東大寺大仏殿参籠」を読み解く | 絵巻で見る 平安時代の暮らし(倉田 実) | 三省堂 ことばのコラム
場面:尼君が弟命蓮との再会を祈願しているところ 場所:山和国、東大寺大仏殿 時節:ある年の春か。 人物:懇願する尼君 夢想する尼君 祈る尼君 臥す尼君 立ち上がった尼君 歩き出す尼君 建物など:①壇正積み(だんじょうづみ)の基壇 ②束石(つかいし) ③高欄 ④葛石(かつらいし) ⑤回廊 ⑥瓦屋根 ⑦連子窓(れんじまど)...

【外部リンク】信貴山縁起「尼君巻」の「東大寺大仏殿参籠」を読み解く

「信貴山縁起絵巻」東大寺大仏殿へ行き尼君がお祈りする場面。わかりにくいですが、尼君が参拝に来て、お祈りを終えるまでの一連の流れが描かれています。

1つの画面で時間の流れを表す技法

異時同図法(いじどうずほう)とは、同じ一つの画面の中に同一人物が複数回登場することで時間の流れを表す手法です。

漫画でいうコマ割りのような技法で、コマ割りの起源とも言われています。

この技法の最古の例は仏壇に描かれた絵ですが、絵巻物の発展により主流の表現技法となりました。

絵巻物の読み方と同じように、右から左へ時間が流れていくルールとなっています。

絵巻物の歴史は?

奈良時代 絵巻物の登場

日本最古の絵巻物「絵因果経」

最古の絵巻物とされている作品は、奈良時代に制作された絵因果経(えいんがきょう)です。

絵因果経 奈良時代8世紀 奈良国立博物館 重要文化財 (引用元)

この作品は、仏教の釈迦の前世から悟りを開くまでの話を綴ったものです。

絵因果経では上半分が絵、下半分が物語の説明文(詞書)となっており、この形式は平安時代の作品にもよく見られます。


その後、平安時代には文字や書道の発展とともに絵巻物の文化が発展し、伊勢物語などの物語絵巻が描かれます。

三大絵巻物が登場 平安時代

三大絵巻物と言われる作品は以下の三作品です。

  • 源氏物語絵巻
  • 伴大納言絵巻
  • 信貴山縁起絵巻

いずれも平安時代に制作され、国宝に指定されている絵巻物です。

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(写真)伴大納言絵巻 作者不明 平安時代末期

日本四大絵巻物 鳥獣人物戯画

近年では、上の3つの作品に加え、最近絶大な人気を誇る「鳥獣人物戯画」を含めた四大絵巻物として紹介されることもあります。

絵巻物の最盛期 鎌倉・室町時代

鎌倉・室町時代には、戦記絵巻物や縁起絵巻など種類豊富になっていき、庶民に向けた作品も出てきて、絵巻物の最盛期を迎えます。

※縁起絵巻とは、あるお寺(または神社)の建てられた由来やご本尊の説話について描かれた絵巻物のことです。

歴史館 | 防府天満宮
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