今回は現在国立新美術館で開催中の展覧会「テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ」について、その見どころや予習として知っておきたいアーティスト、作品をご紹介します!
国立新美術館とは?
特定のコレクションを持たず幅広い企画展をしている美術館
国立新美術館は2007年に開館した割と新しい5番目の国立美術館です。
公式HPにもある通り、「新しい文化の創造」を目的としているため、特定のコレクションを持たず(よって常設展もありません)様々な企画展を行なっているのが特徴的な美術館です。
国立新美術館は、芸術を介した相互理解と共生の視点に立った新しい文化の創造に寄与することを使命に、2007年、独立行政法人国立美術館に属する5番目の施設として開館しました。以来、コレクションを持たない代わりに、人々がさまざまな芸術表現を体験し、学び、多様な価値観を認め合うことができるアートセンターとして活動しています。
https://www.nact.jp/introduce/about.html
おしゃれなカフェ・レストランにも注目
国立新美術館は1つのレストランと3つのカフェがあり、外観も美しいため、展示以外にも気軽に楽しむことができる美術館となっています。
中でもオススメなのが2階にある「サロン・ド・テ ロンド」テート美術館展会期中は「ウエッジウッドカフェ」となっており、イギリスの洋食器で有名なウエッジウッドとのコラボメニュー(アフタヌーンティー)が楽しめます。
今回の展示「テート美術館展」について
ではそもそも、テートとはどのような団体で、どのような作品を収蔵しているのでしょうか?テートについて調べてみました。
テートでイギリスのアートを網羅できる!
TATE(テート)とは、イギリス政府所有のコレクションを管理する団体のこと。TATEはテート・ブリテンやテート・モダンなどの国立美術館を四施設も管理しています。
TATEは主に16世紀以降から現代に至るまでのイギリス絵画を多数収蔵しており、ターナーやジョン・コンスタブル、フランシス・ベーコンなど、イギリス出身の世界的アーティストの作品を見ることができます。
時代の違う画家たちの「光」の表現に注目
本展覧会では時代の違う画家たちの絵画を「光」というテーマで選んだ約120点が展示されています。
人々が光をどのような存在として考えていたか、どのような光を描いてきたか、時代を超えて展示された空間で鑑賞することで、人間の感覚や物事の捉え方について新たな発見があるかもしれません。
予習しておくべき画家
ターナーとコンスタブル
19世紀のイギリスを代表する画家
ウィリアム・ターナーとジョン・コンスタブルは19世紀のイギリスを代表する画家です。産業革命により一躍世界の覇権を握ることとなったイギリスで花開いた彼らはイギリス史で最も重要な画家と言っても過言ではありません。
ターナーの目には見えない(見えにくい)ものを描こうとする一面や、コンスタブルの戸外制作で自然のあるがままを描こうとした制作のあり方は、後の印象派や抽象絵画に大きな影響を与えることとなりました。
格式低いとされてきた風景画を描く
ターナーとコンスタブルは2人とも風景画で有名な画家ですが、新古典主義で古典を倣った絵が素晴らしいとされていた当時、風景画は格式低いものとされていました。
しかしフランスでロマン主義の流れが起こり、画家自らの感情を前面に出した絵画が流行り始めたことや、イギリスが産業革命などをきっかけに豊かになったため、民衆に活気が出て「旅行気分になれる」風景画の需要が高まったことから彼らの描く風景画が評価されるようになりました。
ターナーはドラマチックに、コンスタブルはあるがままに描く
2人の風景画の大きな違いは、「自然を想像で描いたかどうか」にありました。
ターナーはスケッチした膨大な風景スケッチをもとに、想像を含めながら練り直して描いたのに対し、コンスタブルは戸外製作をいち早く取り入れ、自然をあるがままに描こうとしました。
そのためターナーの絵画はバロック絵画を想わせる劇的で見るものを引き込ませるドラマチックな絵となり、コンスタブルの絵画は自然のおだやかで温かみのある絵となりました。
本展覧会では「光」をテーマに集めた作品が展示されるため、ターナーが長年追い求めた光の表現や、コンスタブルの自然の光の表現に注目して鑑賞すると面白いかもしれません。
セクション別の見どころを紹介
第1章「精神的で崇高な光」
セクション1では古来から格式高いとされ多く描かれてきた宗教画の「光」に着目した絵画を展示しています。
宗教–キリスト教において光とは、天地創造の4日目につくられた「光るもの」から始まっています。
また、神や権威の高い人物は古来から光と共に描かれてきており、光はセクション名通り「精神的で崇高」なものであったことがわかります。
ターナー「光と色彩(ゲーテの理論)—大洪水の翌朝—創世記を書くモーセ」
ターナーの死後に寄贈された作品で、今回初来日となる本作。
ゲーテの理論とは、文学者として有名なゲーテ(1749-1832)が研究して書いた光や色の新しい考え方のこと。
この考え方は物理学的というよりは心理学的な考え方で色彩心理学の先駆けとされています。
そのような考え方を取り入れて描いたターナーの絵画が我々の感情を大きく揺さぶるのも納得ですね。
光と色を研究して書いた『色彩論(しきさいろん)』で、ゲーテは、ニュートン(1643-1727)のように光線の道すじや角度のデータで色を理解することに反発をしています。人の目が色を見るときどんなふうに見えてどんなふうに感じるのか、人間の体験を中心に観察するのが大事だと考えたのです。
https://global.canon/ja/technology/kids/mystery/m_04_10.html
第2章「自然の光」
セクション2ではあるがまま自然の光を描こうと試みたコンスタブルや、移りゆく光を捉えようとした印象派のクロード・モネやカミーユ・ピサロなどの作品が展示されています。
コンスタブル「ハリッジ灯台」
コンスタブルが世間にも認められ始めた頃の作品。地平線を通常より下側に配置することで、広大な自然を描くことに成功しています。
コンスタブルは特に「雲」の表現に力を入れたと言われています。夏の暑さを思わせる厚みのある雲の表現は引き込まれます。
ジョン・ブレット「ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡」
ポスター起用作品の本作品。ラファエル前派に影響を受けたというジョン・ブレットの作品。
自然をありのまま描こうとした点がコンスタブルと類似しています。
絵の具の盛り上げによりライトを当てられた部分がキラキラと照らされ、朝日に照らされて神々しく光る海が美しく表現されています。
【外部リンク】画家”ジョン・ブレッド”が気になったので、調べてみました!
ジョン・ブレットはあまり知らない画家だったため、上記のブログで学ばせて頂きました。とてもわかりやすかったので深く知りたい方はぜひ。
第3章「室内の光」
ヴィルヘルム・ハマスホイ「室内」1899年
ヴィルヘルム・ハマスホイはデンマークの画家で、長く忘れ去られていましたが20世紀になって再評価が進んでいる画家です。
彼は生涯で室内画を数多く描きました。
特徴的なのは、室内を描きながらもその室内には生活感がないこと。モチーフを最小限に抑えた彼の作品には静寂さを感じます。
第4章「光の効果」
ルイジ・ヴェロネージ「写真 n.145」
ルイジ・ヴェロネージ「写真 n.145」1940年制作、1970年代にプリント
ルイジ・ヴェロネージはバウハウスに分類されるイタリアの写真家です。
バウハウスとはドイツの建築とデザインの学校のことで、さまざまな分野を総合的に学び統合させようと試みた学校でした。そんなバウハウスで、ヴェロネージは光を使った実験を試みました。
「バウハウス」の「バウ(BAU)」はドイツ語で建築を意味しており、芸術と生活を合わせた存在としての建築を中心とし、芸術、手工業、職人の技術などすべての造形活動を統合することを目的としていた。
https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016&wid=30147&wdid=01#:~:text=「バウハウス」とは、1919,ことを目的としていた%E3%80%82
第5章「色と光」
このセクションからは現代的な作品が多く展示されます。
空間全体をアートととらえるインスタレーション作品も多く展示され、体全体でアートを体験できます。
ゲルハルト・リヒター「アブストラクト・ぺインティング(726)」
ゲルハルト・リヒター《アブストラクト・ぺインティング(726)》は日本初出品かつ日本特別出品作です。
本作品はリヒター作品の中でも特に人気の高い「アブストラクト・ペインティング」シリーズ。大きなヘラを使い絵の具を引き伸ばしたようなマチエールが特徴的です。
本展覧会では数々の「光」をテーマにした作品が置かれている中、あまり説明もなく置かれている本作品。リヒターはどのように光を捉え、作品を制作していたのでしょうか。
リヒターは自身の作品について、中心となるテーマは光であると語っています。
リヒターは本シリーズのほかに写真をもとにして制作した作品を数々発表しています。
写真は光を焼き付けて世界を写しとる道具で、そんな写真をリヒターはあえてぼかしたり、上から絵の具を載せたり、削ったりして抽象絵画を作り出しています。
リヒターは写真という光を映し出す道具についてどのように考えていたのか、考えながら鑑賞すると面白いかもしれません。
また、本作品ではただ絵の具を重ね合わせた絵でありながら、光の反射やツヤを感じさせます。作品をじっくり見て、どのように絵の具を重ね合わせのか、工程を想像するのも面白そうです。
第6章「光の再構成」
電球や広告などの登場で変化した「光」に対する考え方や新たな関係性を探るセクションです。
ジェームズ・タレル「レイマー、ブルー」
6章で注目すべきは、本展の注目作品のひとつ、日本初出品のジェームズ・タレルの「レイマー、ブルー」
展示室内に広々と設置された青いライトは、まるで夢や幻などの異空間へトリップした感覚になります。
タレルは光や色を純粋に表現することで、人間の知覚について探求したと言われています。ぜひ会場で体験して欲しい作品です。
第7章「広大な光」
オラファー・エリアソン「星くずの素粒子」
本展の最後を豪華に締めくくる本作品。ミラーボールのような形態ながら、穏やかで心地良く感じる光を展示室の壁に反射させています。
エリアソンは特定の環境の中で、光がどのように人間に知覚されるか探求し制作をしているそう。
「鑑賞者が作品の意味づけに関わることが包摂の始まり」だとエリアソンは言います。
エリアソンの意図に添い、本作品を目の前に鑑賞したとき、自分自身が光についてどのように感じるか、この作品が我々にどのような作用をもたらすのか、一緒に鑑賞する人と話し合うのも素敵ですね。
展覧会情報
企画展「テート美術館展 光 ─ ターナー、印象派から現代へ」
会期:2023年7月12日(水)〜10月2日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:東京都港区六本木7-22−2
開館時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
※入場はいずれも閉館30分前まで
休館日:火曜日
観覧料:一般 2,200円、大学生 1,400円、高校生 1,000円
※内容は変更となる場合あり(最新情報については展覧会ホームページにて確認のこと)
コメント
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I really like all the points you’ve made.