概要
唐絵とやまと絵は、中国から絵画が伝わって来たことから、日本古来の絵画と区別するために「唐絵」と「やまと絵」というジャンルが生まれました。
- 主な違いは題材(モチーフ)
- 唐絵
- 中国から来た絵画・中国的な主題の絵画
- 題材:中国唐の風景や人物、花鳥画
- 鎌倉時代以降は中国の影響を受けた絵画のことを指す
- 雪舟や狩野派に繋がる
- やまと絵
- 日本的な主題を扱った絵画
- 題材:日本の風景や風物・風俗
- 土佐派や琳派、近現代の日本画壇に繋がる
唐絵とは
唐絵とは中国から来た絵画、または中国的な主題を扱った絵画のことを言います。
唐は中国で約 300 年続いた大国で、794年に作られた平城京は唐の都長安をモデルに作られるなど、当時の日本にとっては強く憧れた国でした。
中国人が日本へ来た来歴は
遣隋使(けんずいし)が600-618年で3回~5回派遣
遣唐使(けんとうし)が630-665年、702-838年に派遣されています。
これらの渡航により、多くの中国絵画が日本に伝わりました。
鎌倉時代の後期からは、唐絵といえば宋元画(中国宋・元時代の絵画)のことを指すようになるなど、唐絵の定義も時代とともに変わっていきますが、いずれにせよ「中国から来た(または中国風の)絵画」が唐絵と呼ばれていきました。
唐絵はその後の雪舟や狩野派に影響を与えました。
平安時代の唐絵の代表作「鳥毛立女図屏風」
平安時代の代表的な唐絵は、正倉院宝物の鳥毛立女図屏風(とりげりつじょのびょうぶ)です。
【外部リンク】 鳥毛立女図屏風752~756年 135.9×337.2cm
「鳥毛」という名前がついている通り、もとは服に鳥の羽毛がついていた美人画。
女性の化粧や樹木の下に女性を描く構図の美人図は、中国から伝えられたものとされています。
木下美人図の源流とされる絵画はこちら(外部リンク-MOA美術館)
やまと絵とは
やまと絵とは、日本的な主題を扱った絵画のことで、唐絵に対して名付けられました。
やまと絵のそもそもの始まりは、日常で使用している道具に四季の絵を描いて、日常の生活に彩りを与えたところから始まったとされています。
894年の遣唐使廃止により、日本の風土に合った貴族文化(国風文化)が発達したことで「やまと絵」というジャンルが認知されるようになります。
代表作「源氏物語絵巻」
やまと絵といえば、12世紀前半に描かれた、日本最古の絵巻物と言われる「源氏物語絵巻」が有名です。
【外部リンク】 源氏物語絵巻 藤原隆能(ふじわらのたかよし) 12世紀前半 徳川美術館
鎌倉時代後期、中国から宋元画が渡ってくるようになると、唐絵はまた脚光を浴びるようになり、やまと絵は一度衰えますが、この流れは土佐派や琳派に受け継がれ、現在の日本画壇にも影響を与えています。
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