概要
生没年 1795-1858年
時 代 江戸時代後期
居住地 江戸
分 類 琳派
代表作 夏秋渓流図屏風・朝顔屏風図
特 徴 装飾的で洗練された構図・美しい絵の具
その他 一度は忘れ去られた絵師
酒井抱一に弟子入り
琳派の画家は、師弟関係がないことが多いですが、其一は18歳で酒井抱一に弟子入りし、絵画を学びました。
そんな其一が現代でもよく知られるような画風となったのは、師匠である酒井抱一の死後。
師匠の死という出来事から、「自分の画風」について考え始めた其一は、自己流の表現を模索するため、野山をめぐり抱一より立体的な表現を試みるようになりました。
巧みな絵の具の使い方
其一は絵の具をよく研究し、巧みに使う人物でもありました。
日本画は鉱石や貝などを砕いた顔料に、膠(にかわ)という接着剤を混ぜることで絵の具を作りますが、顔料に混ぜる膠の濃さや量を調節することで、同じ絵の具でも様々な表現ができます。
代表作・朝顔図の青い花びらでは、膠(にかわ)の量を少なくすることで、顔料が光の乱反射を受けるようになり、独特な重厚感をつくりだすことに成功しました。
有名な作品
夏秋渓流図屏風
(画像)夏秋渓流図 鈴木其一 1831-1845年 166.4×726.6cm 六曲一双 根津美術館所蔵
其一が酒井抱一の死をきっかけに「自分の画風」にいつて考え始め、独自の表現を始めた頃の代表作。
立体的で写実的な構成でありながら、色は明快なベタ塗りにすることで、琳派らしい平面らしさを残しつつ、こちらに向かって水が襲いかかってくるような不思議な立体感が生まれています。
晩年の代表作「朝顔図屏風」
其一晩年の代表作。
朝顔は「朝顔市」という市場が開かれるほど当時江戸で流行していた花で、こちらの朝顔もその朝顔市でスケッチされたものと考えられています。
尾形光琳「燕子花図屏風」のオマージュ
この作品は琳派の画家・尾形光琳の「燕子花図屏風」のオマージュだと考えられています。
金地と花だけで構成している構図や、青と緑のみの色彩など…比べてみると、似ているところが多々あります。
光琳の燕子花図屏風の方が洗練されていますが、其一の朝顔図屏風は、朝顔たちが踊っているような軽快さ、賑やかさがあります。
モチーフの花も、光琳は伊勢物語から引用した「燕子花」をモチーフにしていますが、其一は当時人々に人気だった「朝顔」をモチーフにするなど、光琳に比べて庶民的です。
それぞれの作品を比較して鑑賞するのも勉強になりますね。
風神雷神図襖
琳派の画家たちが何度も描いた風神雷神ですが、其一は先人たちのように屏風で描くのではなく、襖絵として描き、また鮮やかな彩色を使わずにじみを生かした水墨画で描きました。
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